南野 尚紀
『村上ラヂオ3 サラダ好きのライオン』には、「ジャズは聴きますか?」というエッセイがある。
ジャズがいろんなところで流れ、伝統芸能化してるという状況について書いたエッセイだ。
僕はジャズを聴く。
1960年代、1970年代に青春を過ごした文化好きには、ジャズが好きな人、あるいは好きだった人が多くいるけど、不思議な共通点がある。
中上健次のように、ある年を境に、もうジャズは聴かなくなったという人が何人もいるということだ。
なぜジャズを聴かなくなるのか、理由はわからないけど、僕はそれを知っても、ジャズを聴くのはやめなかった。
村上春樹が話してる通り、少なくとも日本では、ジャズはメジャーな音楽ではなく、共有する仲間もあまりいない状態だし、昔は少数派のトガった音楽だった上に、今でも少しはそういうところがある。
確かにジャズは廃れた。
それでもジャズ好きはジャズの火を絶やさないように、ジャズを聴いて、密かにここが心地いいとか考えたりするわけだけど、ふつうのポップミュージックを聴いた方が、実際には、みんなと意見は合いやすくなるし、健康的でもある。
ジャズが好きと言いつつ、やっぱり僕も大人だからということでそんなにはジャズを聴いてないんだけど、今日、村上春樹が通ってたというウワサのある新宿のジャズ喫茶DUGのマスターが亡くなったという話が、Xに投稿された。
マスターの中平穂積さんには、本に使うための写真の使用権も借りたし、ジャズの話から、中上健次、三島由紀夫との交友の話も聞かせてもらったので、本当にありがたい思いだ。
写真集にサインくださいと言ったら、「ジャズの神様に感謝」と書いていたのが印象的で、今でもこの言葉は時々使う。
イタリアでは、今でもバイクに乗る人は山のようにいるし、タバコを吸う人もやたらいる。
バイクだって、「なんで車じゃなくて、バイク乗ったりする人がいるんだろう? 理由は?」と聞かれたら、「かっこいいからかな」としか答えられないし、「そんな趣味持ってたって、今どき、モテるの?」と聞かれたら、「モテないかもしれない」と答えてしまうかもしれない。
ジャズもモテるために聴いてるわけじゃないけど、どこかで好きな女性のために聴いてるところがある。
もちろん、僕の場合はだけど。
持論としては、文学好きと、ジャズ好きは、半熟女好きが多い。
お姉さんが好きなのは、なぜ悪いんですか?
この問いに答えられる人は少ないだろうし、ジャズだって、文学だって、もっとよさを広めて、文化について考えることの大切さをみんなに理解してもらってもいいんじゃないかと思う。
いずれにしても、半熟女好きには敵が多い。
その美貌を愛したゆえに、部屋を出れば、1000人の敵が命を狙ってるくらいだ。
もちろんそれは冗談だけど、お姉さんの魅力とジャズの魅力と文学の魅力は、もっと理解されてもいいなぁって思う、今日この頃である。
了