夏の残りの太陽の日差しを感じながら、早稲田大学のキャンパス内にある早稲田国際文学図書館こと、村上春樹ライブラリーを訪れた。
早稲田大学に着くまでの通りには、個人経営の雑貨屋や、学生向けのラーメン屋や、レストランが並んでいたけど、文禄堂が潰れたのは惜しいことだ。
早稲田大学の構内は、初秋のまだ黄色になる気配がない緑が生い茂っていて、秋はまだかなと待つばかり。
以前、東京大学の五月祭に行った時は、学祭なのにどうもどんよりしてるなっていう印象があったし、東京藝術大学もそうだけど、ヨーロッパ人らしき学生がほとんどいなかった。
早稲田にはなぜかヨーロッパ人系の学生がたくさんいるし、学生も心なしかインテリジェンスが感じられる雰囲気の学生が多い。
僕は受験勉強が苦手な学生だったし、住んでいた場所もイタリアと比較するまでもなく、日本の中でもこんなに悲惨な土地もないんじゃないかってくらい酷い場所だった。
だから、早稲田に入るのはあと一浪しても難しいかったと思う。
そんなこともあって早稲田は憧れのある大学だし、仕事をしながら、フィレンツェ大学の大学院に行くのもありかもしれないとか密かに思ってもいる。
村上春樹ライブラリーはできて3年しか経っていないので、清潔感もあるし、スタイリッシュな作りで、住民や大学生の憩いの場所でもあるようだ。
ライブラリーでは、絶版本『ウォーク・ドント・ラン』を読む。
村上龍と村上春樹の対談本で、当時の日本文学の先端を行く2人の感じっていうのはよくわかる本だ。
僕のほとんど率直な意見は、他のエッセイに書いたので、ぜひそっちを読んでほしい。
気になった方がぜひ。
本を読む前に、バター醤油とキノコのパスタを食べた。
バター醤油なのにクセのないあっさりした味が、食べやすい。
本を読んでいるといろんなことに気がつく。
普段、家やカフェで本を読んでいる時より、少し集中できる気がする。
当時のヒッピーにはいろんな人がいて、要するにそのあとに出てくるヤクザに近いヤンキー文化に近いヒッピーも相当いたんだろう。
僕個人は、早稲田大学卒の保坂和志ほどニューエイジ的な作家も日本では見たことがないし、トスカーナのピサ(僕が住む予定の土地であり、この2人の作家の本はほとんど全冊読んでいる)出身のアントニオ・タブッキもニューエイジ的で、トスカーナというのは、ヒッピーカルチャー、オーガニックカルチャーが好きだとか、ベジタリアンは知っている中だけでもいる。
僕もピサの人間になったら、いい女性と出会ったら、思想的な本や、お役立ちエッセイだけでなく、もっと彼女との楽しい日々、だけでなく、フィレンツェやピサのことを書いたエッセイ、文学仲間と過ごす時間のことも書けるだろう。
早稲田にはセブンイレブンもあるが、ずいぶん古さを感じさせる購買部もある。
そこでトロピカーナのリンゴジュースと、マウント・レーニアのエスプレッソを買って、図書館で飲みながら思った。
学生に戻った気分だ。こんなにいい場所が近くにあったら、土日はよろこんで本を読みに来るだろうし、奥さんがいても、2人で集中して本を読んで、橙子猫っていうカフェでパスタを食べながら、コーヒーを飲んで人生や哲学について語り合うのもいい。
もちろん、ピサに住むわけだから、そういうことは実際にはないわけだけど、日本に一時帰国する際には、横須賀と鎌倉と藤沢以外に、早稲田も意外と安心するのかもなと思った。
あとで知ったことだけが、『ウォーク・ドント・ラン』はAmazonで10,000円する。
イタリアの自由業就労ビザの取得の関係で、銀座の公証役場に今来てるんだけど、今日はZARAで買い物でもして、ホテルに泊まったあと、次の日、国会図書館で村上春樹の絶版資料を探しながら、その本を読んだり、捨ててしまった中上健次との対談本『オン・ザ・ボーダー』を借りて、必要箇所だけコピーするのもいいと思った。
国会図書館は本の全体はコピーしてはいけないことになってるけど、一部だけだったらコピーしていいことになってるから。
他に村上春樹の絶版の本でどんなものがあるのか気になるし、なくてもアントニオ・タブッキの特集が、『ユリイカ』となにかで組まれていたから、それを読むのもいい。
それにしてもよく晴れた日だった。
つい寂しそうに座ってるヨーロッパ系の女性の学生に声をかけてしまいそうになったくらいだ。
次の日はどんよりしてて、雨が降っていたけど。
了