南野 尚紀
1.イントロデュース
数えてないからわかないけど、10年ぶりくらいに『カンガルー日和』に収録されている「5月の海岸線」を読んで、もっと哲学的な深みがほしいなぁっても思ったし、素直に僕が思うオーガニックカルチャーの理想に近い作品だったから、あらためて好きになった。
「スパゲッティーの年」の方が、「孤独」や「出会いの意味」について書いてるので、テーマとしてはめずらしいが、作品を読む楽しさとしては「5月の海岸線」を僕は推したい。
2.作家紹介
一九四九年京都生まれ、兵庫出身。早稲田大学卒業後、東京の国立でジャズ喫茶「ピーターキャット」を経営する。一九七九年、初めて書いた中編小説『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞。一九八二年、『羊をめぐる冒険』で野間新人文学賞を受賞。その後も数々の賞を受賞し、二〇〇六年にはフランツ・カフカ賞も受賞。
代表作に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『色彩のない多崎つくると、彼の巡礼の年』、『騎士団長殺し』がある。
海外移住や旅行経験も豊富で、英語が堪能。翻訳者としても有名で、多くのアメリカ文学の小説を日本語に翻訳している。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を敢えて、英語名の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と翻訳し、タイトルをつけたことは、文学の世界では有名。
初めて書いた小説、『風の歌を聴け』は一度、新しい文体や雰囲気を発見するために、英語で書いた文章を日本語に訳して、賞に投稿した。
3.あらすじ
短い小説なので、長く語りすぎることもない。主人公の「僕」は友人の結婚式に呼ばれて、10年ぶりに地元の海辺の街へと帰る。
新幹線で退屈し、変わらない部分もある見慣れた街を歩き、海が埋め建てられて、その上にできたビル群を、「いずれ崩れ去るだろう」と僕は考える。
結果、彼は海岸に打ち寄せられる自殺した水死体のことや、落書きのことを思い出しながら、ふっと眠りについてしまう。
4.本論
僕ももともとオーガニックカルチャーが好きで、ヨーロッパは大好きだけど、他の地域の土地に根差したネイティブのカルチャーもいいなぁって感じてる。
日本では、湘南は平日からサーフィンをしたり、八百屋が行列になったり、その他にも、夕暮れが湘南に来たばかりの時の僕の胸を熱くしたりとか、オーガニックカルチャーの活性度が高いけど、僕もロハスは少し憧れていて、偶然、その気持ちが強くなった頃にイタリアに行った。
驚きだったのが、イタリアの特に、フィレンツェとシエナがスローライフを絵に描いたような場所で、イングリッシュパーティーにもベジタリアンカルチャーとか、オーガニックカルチャーが好きって言っている女性がいて、すごくうれしい気持ちになった。
フィレンツェを心から愛してるのに、さいたま新都心とお台場を好きというのは矛盾してるからハッキリ言うけど、僕はさいたま新都心とお台場が大嫌いだ。
文化的な水準の低さというか、人間の心や自然を見捨ててる感じが僕には合わない。
商売って言うんだったら、人の心が喜ぶ、人が長期的に見て、美しく幸せになれる商売をやってほしいし、街単位でああいうことをやってるっていうのは、イタリアではまず見なかった。
ミラノは少しその要素があったけど、やはりキレイさの志向性がまったく違う。
僕も時にゆっくり、時にしっかり仕事に恋愛に生きたいのに、それを邪魔してくる人たちとは、やっぱり腰を上げて戦わなくてはならないから、ハッキリ言うことにした。
最先端のテクノロジーばかりに囚われて自然を見失ったり、人間の心を見失ったり、テクノロジーの美しく、正しい使い方をわきまえないと、日本は滅びるだろう。
少なくとも、僕はフィレンツエに住むから、どうするも日本人の自由だけど、僕の生活の迷惑はかけないでほしい。
村上春樹のような一作家が、ここまで真実味を持って、「あなた方は崩れ落ちるだろう」と書けるのは相当な念だと思うし、ピュグマリオンと同じで、その念はまたピュグマリオンとは別の形で叶うんだろう。
僕はそういう心を理解してないらしい人たちに、嫌な目に遭ってるのでもう懲り懲りだ。
それこそ、好きな女性と井戸に冷やされた美味しい桃でも食べて、ゆっくり時を過ごしたいのに。
僕は戦う。
女性とオーガニックカルチャーのためには、なるべく譲らないで作家活動を続ける。
そんな闘志に火をつけてくれたので、村上春樹のこの作品はほんとに好きだ。
僕はあんまりさわやかな笑い方をしますね、とか言われたことないし、言葉も情熱的なので、さわやかな言葉だとは言われない。
単にやや本質的で毒のある言葉をサラッと言うだけでさわやかだ表現だと人の表現を言う人とか、意味がないことをキレイに並べ立てて微笑むだけでさわやかだと表現する人とか、僕にはよくわからない。
村上春樹はさわやかだ。
そんな村上春樹には、フィレログさわやか文学賞をあげたい笑
5.参考文献
村上 春樹 『カンガルー日和』 講談社
了
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